モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の違いをわかりやすく比較

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モンテッソーリ教育」と「シュタイナー教育
最近よく耳にするのだけど、一体どんな教育なんだろう?

今回の記事では、少し踏み込んで2つの教育方法について、比較しながらわかりやすく解説してみたいと思います。

この記事を書いた私は、29年間公立学校の教育に携わってきました。

その中で、モンテッソーリやシュタイナー出身のお子さん、公立の小学校に籍をおきながらモンテッソーリやシュタイナーに通っているお子さんやその保護者の方々と関わってきました。

また、自分自身も2つの教育については興味をもって学んできました。そんな経験や知識も踏まえて今回の記事を書いています。

目次

モンテッソーリ教育とシュタイナー教育【はじまり】

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まずはシュタイナー教育とモンテッソーリ教育は、どこで、誰が、そしてどんな経緯で提唱したのかということについて簡潔にまとめてみました。

モンテッソーリ教育

<発祥の地>
イタリア

<提唱者>
モンテッソーリ教育は、イタリア出身のマリア・モンテッソーリ(1870-1952)が生み出した教育方法です。モンテッソーリはイタリア初の女性の医学博士号を取得し、ローマ大学付属の精神病院に勤務した医師でした。

<モンテッソーリ教育の確立>
障害児の治療教育をとおして成果をあげた感覚教育法を、ローマの貧困家庭の子どもたちに応用し、そこでも大きな成果をあげました。

その後、哲学を学びさらには生理学や精神医学の研究も積み重ね、モンテッソーリ教育と呼ばれる教育方法を確立したのです。

シュタイナー教育

<発祥の地>
ドイツ

<提唱者>
オーストリア出身の哲学者・教育者であるルフドルフ・シュタイナー(1861-1925)によって生み出された教育方法です。シュタイナーは、人智学(アントロポゾフィー)という精神運動を確立したことでも知られています。

<シュタイナー教育の確立>
1919年にタバコ工場の労働者の子どもたちのために設立された「自由ヴァルドルフ学校」が、シュタイナー教育の始まりです。

日本では「シュタイナー教育」と呼ばれますが、海外では「ヴァルドルフ教育」または「ウォルドルフ教育」と呼ばれています。

モンテッソーリ教育とシュタイナー教育【理念】

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教育理念とは「教育が到達すべき究極の理想的な姿」といわれます。

シュタイナー教育とモンテッソーリ教育が、それぞれどのような教育理念に基づいたものなのか、わかりやすく説明したいと思います。

モンテッソーリ教育

モンテッソーリ自身はこう語っています。

「この教育の真髄は、教師が子どもに何かを教えるのでなく、子どもに内在する自分で自分を育てる力、「自己教育力」を信じそれを促してあげることである」

子どもたちが「自己教育力」を発揮して、自分で考え、自分で行動できるよな自立した人間になっていくことが、モンテッソーリ教育の理念といえるでしょう。

シュタイナー教育

シュタイナーはこう語っています。

「子どもの魂の中にあれこれいろいろなものを注ぎ込んではなりません。そうではなくて子どもの精神の前に畏敬の念を持つのです。この精神は自分自身で成長していきます。私たちの責任は子どもたちの成長を妨げる障害物を取り除き、その精神が自分自身で成長するきっかけをつくってあげることなのです」

子どもたちの個性を尊重し、一人ひとりの持つ能力を最大限に引き出す教育なのです。ですからこの教育をとおして、子どもたちは自分の意思によって自由な生き方のできる人物に育っていくことが、シュタイナー教育の理念といえるでしょう。

モンテッソーリ教育 とシュタイナー教育【特徴】

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シュタイナー教育とモンテッソーリ教育の特徴を、それぞれの教育を語るときにでてくるキーワードをとおして説明したいと思います。

モンテッソーリ教育

敏感期

子どもが何かに対して強烈な関心とこだわりをもって取り組む時期のことを敏感期を呼んでいます。

この特定の時期に、子どもは学習し、どんどん吸収して成長します。

この時期を見逃さずに適切な活動をさせてあげようとするのが、モンテッソーリ教育の特徴でもあります。

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発達の4段階

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モンテッソーリ教育では、発達段階を大きく4つに分けて「発達の4段階」と呼んでいます。

第1段階 0〜6歳
人生に必要な80%の能力を身につける最も大切な時期としています。

第2段階 6〜12歳
グループ意識が芽生え、社会性が育つとともに、さまざまなことに興味を持ちながら、抽象的な考え方ができるようになる時期。

第3段階 12〜18歳
心身ともに大きな変化が訪れる時期で、精神的にも情緒の振れ幅が大きくなり、好奇心は自分の内側へと向く傾向にあります。

第4段階 18〜24歳
自分自身の人生に立ち向かう時期になり、1人の人間として自立していく時期です。

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お仕事

モンテッソーリ幼稚園などで行われるほとんどの活動を「お仕事」と呼んでいます。「あそび」=「お仕事」と表現することもありますが、それぞれの「お仕事」には、子どもの成長を考えた目的があるものです。

教具


モンテッソーリ教育で「教具」と呼ばれるものは、一見おもちゃのように見えるものもありますが、先程の「お仕事」をするための道具ととらえるとわかりやすいですね。

子どもの敏感期に合わせ、伸ばしたい能力に特化した「教具」は、色も形もシンプルで、とても洗練されています。最近では100均で手に入るものを上手に使って、教具を手作りすることも盛んになっています。

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シュタイナー教育

七年期

シュタイナー教育 7年期

シュタイナー教育では、人の成長を7年周期でとらえています。子どもの成長に関しては上の図のようにそのうちの3段階までということになりますね。

第1七年期 0〜7歳 
遊びなどのさまざまな活動ととおして、体をしっかりと動かし「想像力」や「行動力」を育む時期

第2七年期 8〜14歳
「感情」の動きが活発になり、芸術的な味わいを持たせつつ「心」を育てる教育が大切な時期

第3七年期 15〜21歳
「思考」を育てることが大切な時期

エポック授業

全学年の1時間目にある授業で、国語、算数、理科、社会の教科の勉強をする時間です。およそ100分程度の授業が行われ、1つの教科を2〜4週間程度集中的に学びます。

基本的に教科書は使わず、エポックノートと呼ばれる個人のノートに記録したもの自体が教科書となっていきます。

フォルメン線描

直線や曲線に対する形の感覚を、身につけさせる活動です。

オイリュトミー

美しいいリズム」という意味で、音楽や言葉をからだを使って表現する「動きの芸術」ともいわれる活動です。このオイリュトミーは、シュタイナー学校において全学年で行われる大切な活動です。

シンプル・天然素材のおもちゃ

シュタイナー幼稚園などで使われるおもちゃの特徴は、シンプルで天然素材などを使ったものが多いです。積み木も形は不揃いで、木そのものの感触を味わえるようなものを使っています。

ヴァルドルフ人形と呼ばれる人形は、顔自体にはキャラクターのような強い表情はないのですが、そのぶん子どもたちが、自由にさまざまな感情を想像しながら遊ぶことができます。

モンテッソーリ教育とシュタイナー教育 【共通点と相違点】

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2つの教育の共通点

シュタイナー教育とモンテッソーリ教育の共通点といえば、やはり子どもの自由な成長や活動を大切にしている点ではないでしょうか。

子どもたちの自己教育力を最大限に生かし、自分で考え、自分で行動できる自立した人間を育てていこうとするモンテッソーリ教育。

そして、一人ひとりの個性を尊重し、個人の能力を最大限に引き出すことで、自らの意思で自由な生き方ができる人物を育てようとするシュタイナー教育。

そのどちらも、個人の能力を最大限に引き出し、生かすことを大切にしているところが共通点といえるのでしょうね。

2つの教育の相違点

モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の相違点については、発達段階の捉え方と、教員の役割について説明してみます。

発達段階の捉え方

それぞれの教育の特徴のところで示したとおり、モンテッソーリ教育では、0歳〜24歳までを4段階に分けて子どもの発達を捉えているのに対し、シュタイナー教育では子どもの発達を、7年周期の三段階で表しています。

教員の役割

モンテッソーリ教育では、子どもの「自己教育力」を引き出すために、教師には子どもと環境とをつないでいく大切な役割があります。

つなぐと一言でいっても、そこには子どもの成長への深い理解や鋭い観察力が必要となります。ときには子どものかたわらでそっと見守っているだけのように見えるかもしれませんが、とても大切な役割を果たしているのですね。

それに対し、シュタイナー教育では、教師は一人ひとりの子どもの中にある能力や才能を見極めて開花させるための「教育芸術家」としての役割を期待されています。

そのため、教員たちは授業の準備に多くの時間を費やし、自身も創造性を伸ばしていく存在であり続ける必要があります。

モンテッソーリ教育とシュタイナー教育【有名人】

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モンテッソーリ教育やシュタイナー教育を子どものころに受けて、その後有名になった人たちをご紹介しますね。

モンテッソーリ教育

藤井聡太
2016年に14歳2ヶ月という史上最年少で、四段への昇格を果たしプロ入りをしましたが、3歳のときに地元のモンテッソーリ幼稚園に入園しモンテッソーリ教育を受けました。

バラク・オバマオバマ

元大統領自身がモンテッソーリ教育を受け、また、大統領になってからは、モンテッソーリを含む幼児教育に力を注いだことも大きな実績として残っています。

ビル・ゲイツ
コンピュータ言語であるBASIC言語を開発したビルゲイツは、その後マイクロソフト社を立ち上げ、Windowsの開発に至りました。

モンテッソーリ教育を受けた有名人についての詳しい記事はこちらからどうぞ。

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シュタイナー教育

斉藤工
俳優、映画評論家、映画監督と多くの顔を持つ斉藤工は、東京シュタイナー学校に通っていました。中学はサッカーの強い公立中学校に移ったとのこと。

ミヒャエル・エンデ
ミヒャエル・エンデは「モモ」や「ジム・ボタンの冒険物語」など多くの人気作品で有名な小説家です。17歳のときにシュタイナー学校へ転校し、その後俳優学校に転入したのですが、本人自身がシュタイナーの理念の影響の大きさについて認めています。

フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ
現ポルシェの創業者の長男で、911のデザイナーとして知られています。祖父は、現ポルシェの前のポルシェの創業者であり、フォルクス・ワーゲンの設計者でもあります。彼はドイツに生まれ、ヴァルドルフ学校でシュタイナー教育を受けました。幼少期のそうした教育が、彼のデザイナーとしての感性を育んだのかなとも思ってしまいますね。

まとめ

長い歴史を持ち、日本でも古くから注目を浴びているモンテッソーリ教育とシュタイナー教育について、その発祥、理念、特徴などについて比較してみました。

もちろん、どちらの教育が優れているとは言えるものではありません。

しかし、多様化を続ける今の社会において、教育の多様化は必須の課題です。

子育て中のパパやママだけでなく、教育に携わる方々にもちょっとした知識として、心のすみに留めておいていただけたら嬉しいです。

参考
日本モンテッソーリ協会
日本シュタイナー学校協会
『子どもから始まる新しい教育』マリア・モンテッソーリ 風鳴舎
『モンテッソーリ教育で子どもの本当の力を引き出す!』藤崎達宏 三笠書房
『おうちでできるシュタイナーの子育て』クレヨンハウス
『0〜7歳を大切にするシュタイナーの子育て』クレヨンハウス

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